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医療安全推進委員会 Archive

第9回  医療安全セミナー報告

1212()4:00~17:00 静岡県放射線技師会事務所

報告者:医療安全推進委員長 田沢範康

平成274月に診療放射線技師の業務拡大として診療放射線技師法改正が施行されました。

業務拡大を行うための絶対条件として医療の安全を担保する事が求められてきます。

今回はその業務拡大の1つ「静脈注射後の抜針・止血」に関して、今後実践する為の参考として既に取り組んでいる施設に会員発表してもらいました。そして業務拡大の一助として統一講習会など動き出そうとしている最中に起きてしまった、胃X線検診死亡事故に関連してシンポジウムを行いました。

師走の忙しい時期なのに会員22名、非会員12名、合わせて34名と昨年の倍以上の参加者に来ていただきました。(中部組織理事の望月さん、ありがとうございました!!)

  まずは医療安全推進委員長より「診療放射線技師法改正と業務拡大」と題して、なぜ技師法改正の至ったのか、業務拡大の内容は何か、統一講習会の必要性などの解説をおこないました。

 その後、会員発表「静脈注射後の抜針・止血」として東部施設から共立蒲原総合病院、渡邉知巳会員より発表していただきました。共立蒲原総合病院は放射線科医師の不足と看護師が内視鏡と兼務という背景により、技師が抜針を必然的に行わなければならない状況になってしまった事。また、実践していなければわからない造影CTの留置針止めテープや止血テープの素材など貴重な話を聞く事ができました。

そして中部施設からは市立島田市民病院、加藤和幸会員より発表していただきました。市立島田市民病院は造影CT後の抜針は看護師が実施しているがDIPは技師が実施しているとの事でした。また、造影CT後に起きた副作用事例をもとに他職種と共にシミュレーションをおこない、マニュアルの再確認やチーム医療の確立をおこなった様子を説明していただきました。

2施設とも抜針や造影剤副作用時に関してのマニュアルも整備されていて、とても危機意識が高いように思えました。造影剤使用検査に関わる技師は造影剤という何の薬理効果の無い異物を患者さんの体内に入れて検査していると自覚を持ち、常に危機意識を持つ事が大事だと思いました。

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次に20155月に発生した胃X線検診死亡事故に関連して「胃部X線撮影の安全対策について」と題してシンポジウムを開催しました。

まず、機器メーカーからの安全対策として()島津製作所、医療機器事業部グローバルマーケティング部部長の田中修二氏より講演していただきました。装置構成による安全(逆傾斜30°のストップ機構)、被曝管理(IEC3rd規格に対応)などメーカー側の取り組みの話と、導入後の保守管理としてユーザー側が気を付けなければならない日常管理の話をしていだき、とても参考になりました。

そして薬剤メーカーからの安全対策として伏見製薬()名古屋営業所所長の澤村伸太郎氏より講演していただきました。バリウムによる誤嚥対策や重篤な副作用である腸閉塞、消化管穿孔、腹膜炎の対策を話していただきました。検査後、できるだけ早くバリウムを排泄する事が重要になってきます。難消化性デキストリン10g含んだ「PROJECT F」の紹介と実際の商品を参加者に配っていただきました。見た目は500mlのペットボトルで味も普通の水と変わりありません。難消化性デキストリンは水を抱え込む性質があるため、①便の柔らかさを保つ、②便量を増やす、③便の通過時間を短縮させる作用があるそうです。

そして実際に撮影に携わる技師の取り組みに関して西部施設から聖隷健康診断センター、村松晴仁会員より発表していただきました。5月に発生した胃X線検診死亡事故を振り返り、事故がなぜ起きてしまったのかなど、概要をわかりやすく説明していただきました。また、聖隷健康診断センターの安全対策の取り組みとしてグリップの強化やコリメーターにクッションを設けるなどの装置の安全対策や検査前の安全対策として検査説明ビデオや検査案内ポスターの掲示をしていました。検査手技の安全対策として一過性血圧低下の対処で発泡剤を座ってバリウムで飲ませる事や。前壁撮影時は痛くならないように肩当てにクッションを設置したりといろいろと工夫されていました。

 一通りの講演が終わってから、講師を囲んでの質疑応答を行いました。質疑内容は誤嚥対策や肩当てに対する内容で熱いディスカッションが繰り広げられました。

 医療安全推進委員会は会員の皆様に安全とその先の安心を共有していただく為、セミナーを続けていきたいと思います。気軽に参加できるようなテーマを考えていきますので、今後ともよろしくお願いします。

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第8回  医療安全セミナー報告

1213()4:30~16:30 静岡県放射線技師会事務所

報告者:医療安全推進委員長 田沢範康

 

この医療安全推進委員会は、会員が重大な事故につながらないためにリスク情報の共有化を図る目的に発足され、今年で第8回目になります。今回はチーム医療の推進関連の1つにあった「放射線検査等に関する説明と相談を行うこと」をテーマに行いました。検査に関する説明や相談は医療安全の第一歩となります。

 まずは医療安全推進委員長より「放射線被ばく相談員講習会に参加して」と題して報告がありました。これは日本診療放射線技師会主催の講習会です。貿易センタービルにある技師会事務所で3日間開催しました。医療被ばく相談と災害被ばく相談の違いや、被ばく相談はカウンセリングであり傾聴する事が重要で、座る位置によって与える印象が違うなどの体験した報告をしていました。

 次に「造影剤使用時におけるインフォームドコンセント」と題して第一三共株式会社 東海支店エリア統括第二部 造影剤・肝臓領域担当の佐々木達先生の講演がありました。内容は造影剤の説明と同意書に関して日本医学放射線学会が質問の根拠となる文献をエビデンスレベルで点数化しABCで評価をおこなっているので、問診表の参考にして欲しいとの事でした。また最近の造影剤事故の事例を挙げ、医療訴訟となった場合にどのような事が問われるか、説明して頂いた。最後にトピックスとして逐次近似再構成法を用いたCTの低管電圧撮影を使用する事によりヨードの濃度を減らしても同等の造影効果が認められた話をして頂いた。ヨードの濃度が少ない程、副作用の発症率が低く被ばく量も減るので医療安全としても推奨される検査法だと思いました。

 

講習会 012.jpg 講習会 019.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に「放射線検査説明に関するガイドラインについて」と題して元 公益社団法人日本診療放射線技師会放射線検査説明・相談促進委員会委員長の麻生智彦先生の講義がありました。内容は放射線検査説明に関するガイドラインを作成するにいたっての経緯と目的を語ってくれました。大事な事はあたり前の事を確実に正確に伝える事。また、ガイドラインの利用法として技師のベースラインの構築はもちろんの事、新人技師への教育にも活用できる事がわかりました。そして実際に説明するにあたり患者さんから聴きたい説明と医療提供者が伝えたい説明の相違があるので、医療メディエーションの考え方を活用した内容も話してくれました。最後に診療放射線技師の評価を個人ではなく、職種として格を上げる為にカルテ記載を推奨していました。診療放射線技師の責任の発生と社会的な認識と位置づけに繋がるし、記載する為にはスキルが必要になります。目標は安全とその先の安心と力説していただきました。

 医療安全推進委員会も会員の皆様に安全とその先の安心を共有していただく為、セミナーを続けていきたいと思います。気軽に参加できるようなテーマを考えていきますので、今後ともよろしくお願いします。

 

 

 

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静岡県病院協会主催 医療事故防止対策研修会 報告

平成22年9月22日(水)  男女共同参画センター「あざれあ」

 残暑の厳しい9月22日(水)男女共同参画センター「あざれあ」にて(社)静岡県病院協会主催の医療事故防止対策研修会が行われ、県放射線技師会から私と沼津市立病院一杉会員、静岡済生会病院白鳥会員の3名が、また県内の病院からも数名の放射線技師が参加しました。

 今回の研修会は「安全と安心の大きな違い」というテーマで、東京大学名誉教授・日本学術会議副議長・食の信頼向上をめざす会会長、唐木英明氏の講演でした。唐木氏は東京大学農学部獣医学科を卒業、薬理学・毒性学が専門で日本予防医学リスクマネジメント学会感染症・食品安全部会部会長等、多くの審議会・学会で活躍され著書も数多くあり、我々とは異なった分野ではありますが通ずることも多く、講演内容をご紹介したいと思います。

 最初に、「安全は科学的事実に基づく」ことから話されました。厚労省発表の平成19年輸入食品監視統計から、中国、米国、フランス、タイ等の輸入が多い国の違反率をみると、中国0.42%米国0.65%フランス0.55%タイ0.65%、中国食品が危険だ!という認識をみなさん持っていませんでしたか?では、国産品と輸入品ではどうでしょう。東京都の発表ですが、2001年から2007年までの違反品目数をみると2001年で国産0.22%輸入0.49%2007年では国産0.1%輸入0.12%、国産のほうが安全だ!という思いがありませんか?食品添加物(保存料・着色料・甘味料)に関しても、戦前から戦後の混乱期には多量に使用して健康被害が起きていましたが、1970年代から基準の強化・見直しで安全性が向上し、現在は厳しい対策により法律違反はあっても健康被害は出ておらず、食中毒死者数からみても日本における食品の安全性は高いといわれていました。

 次に、「安心は心理的要因」という話をされました。2005年鹿児島県の調査ですが、食品に対する不安の男女差を調べたところ、強い不安・多少不安を抱いている方が男性で81%、女性90.6%、女性の中でも主婦のみでは93.4%もいることがわかりました。これは、母性本能、脳の働きの性差により、女性・主婦の不安が強いからといわれています。しかし、有機食品の市場規模をみると、生鮮品でおよそ1.9%、国内食品消費からみると0.36%という少ない数字になっています。この、認識と実態の違いはどこからくるのでしょう。買う、買わないかを決めるのは、価格、産地、期限、評判などの総合的な判断からで「危険」という情報はその一部でしかなく、その情報はメディアからの「誤解を招く情報」から生まれる「不安」であるといわれました。ここに面白い事実があります。中国冷凍餃子による健康被害が公表された後、都道府県等に寄せられた相談・報告によると有機リン中毒が否定された事例が5915名、有機リン中毒が確定された患者数は10名。六千人近い人が体調不良を訴えたわけです。また、「こんにゃくゼリー」もみなさんの記憶に新しいと思いますが、窒息事故頻度(一億回当たり)を調べると「もち」が6.8~7.6、「あめ」1.0~2.7、対して「こんにゃくゼリー」0.16~0.33、もちやあめのほうが数十倍も危険度が高いにもかかわらず「こんにゃくゼリー」ばかりが窒息の原因のような風潮になっていました。

 そして、「安心と安全を近づける」。有史以来、人間は自分に利益になる情報だけを必要としてきました。人より先に危険情報を得ないと食べられてしまう、自分の利益になる情報を持った人についていくなど、無駄な危険を避けながら生き残ってきました。よって人間は進化の過程で「危険情報」に気を取られやすくなっているのです。「危険情報」は皆さんの気を引き、興味の対象になるため高く売れる、影響を与えやすいため、メディアにコントロールされやすく一部の政治家や官僚のひと言に右往左往してしまう。現代を生きるために必要なことは
 1.偽科学・未科学と正しい科学を見分ける最低限の科学の知識
 2.報道を鵜呑みにしないでその真偽を確認する能力
 3.自分の限られた知識と経験と思いこみで判断し行動する傾向を自覚して検証する能力である。
 質疑の中でも先生は、一つの報道、一人の意見をいろいろな角度から検証する必要性、エビデンスによる立証の重要性をいわれていました。
 とても、話し上手で内容も分かりやすく有意義な講演会でした。ページの都合で部分的にしか紹介できなかったことをお詫びします。

医療安全推進委員会 鈴木 久士

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