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静岡県病院協会主催 医療事故防止対策研修会 報告

平成22年9月22日(水)  男女共同参画センター「あざれあ」

 残暑の厳しい9月22日(水)男女共同参画センター「あざれあ」にて(社)静岡県病院協会主催の医療事故防止対策研修会が行われ、県放射線技師会から私と沼津市立病院一杉会員、静岡済生会病院白鳥会員の3名が、また県内の病院からも数名の放射線技師が参加しました。

 今回の研修会は「安全と安心の大きな違い」というテーマで、東京大学名誉教授・日本学術会議副議長・食の信頼向上をめざす会会長、唐木英明氏の講演でした。唐木氏は東京大学農学部獣医学科を卒業、薬理学・毒性学が専門で日本予防医学リスクマネジメント学会感染症・食品安全部会部会長等、多くの審議会・学会で活躍され著書も数多くあり、我々とは異なった分野ではありますが通ずることも多く、講演内容をご紹介したいと思います。

 最初に、「安全は科学的事実に基づく」ことから話されました。厚労省発表の平成19年輸入食品監視統計から、中国、米国、フランス、タイ等の輸入が多い国の違反率をみると、中国0.42%米国0.65%フランス0.55%タイ0.65%、中国食品が危険だ!という認識をみなさん持っていませんでしたか?では、国産品と輸入品ではどうでしょう。東京都の発表ですが、2001年から2007年までの違反品目数をみると2001年で国産0.22%輸入0.49%2007年では国産0.1%輸入0.12%、国産のほうが安全だ!という思いがありませんか?食品添加物(保存料・着色料・甘味料)に関しても、戦前から戦後の混乱期には多量に使用して健康被害が起きていましたが、1970年代から基準の強化・見直しで安全性が向上し、現在は厳しい対策により法律違反はあっても健康被害は出ておらず、食中毒死者数からみても日本における食品の安全性は高いといわれていました。

 次に、「安心は心理的要因」という話をされました。2005年鹿児島県の調査ですが、食品に対する不安の男女差を調べたところ、強い不安・多少不安を抱いている方が男性で81%、女性90.6%、女性の中でも主婦のみでは93.4%もいることがわかりました。これは、母性本能、脳の働きの性差により、女性・主婦の不安が強いからといわれています。しかし、有機食品の市場規模をみると、生鮮品でおよそ1.9%、国内食品消費からみると0.36%という少ない数字になっています。この、認識と実態の違いはどこからくるのでしょう。買う、買わないかを決めるのは、価格、産地、期限、評判などの総合的な判断からで「危険」という情報はその一部でしかなく、その情報はメディアからの「誤解を招く情報」から生まれる「不安」であるといわれました。ここに面白い事実があります。中国冷凍餃子による健康被害が公表された後、都道府県等に寄せられた相談・報告によると有機リン中毒が否定された事例が5915名、有機リン中毒が確定された患者数は10名。六千人近い人が体調不良を訴えたわけです。また、「こんにゃくゼリー」もみなさんの記憶に新しいと思いますが、窒息事故頻度(一億回当たり)を調べると「もち」が6.8~7.6、「あめ」1.0~2.7、対して「こんにゃくゼリー」0.16~0.33、もちやあめのほうが数十倍も危険度が高いにもかかわらず「こんにゃくゼリー」ばかりが窒息の原因のような風潮になっていました。

 そして、「安心と安全を近づける」。有史以来、人間は自分に利益になる情報だけを必要としてきました。人より先に危険情報を得ないと食べられてしまう、自分の利益になる情報を持った人についていくなど、無駄な危険を避けながら生き残ってきました。よって人間は進化の過程で「危険情報」に気を取られやすくなっているのです。「危険情報」は皆さんの気を引き、興味の対象になるため高く売れる、影響を与えやすいため、メディアにコントロールされやすく一部の政治家や官僚のひと言に右往左往してしまう。現代を生きるために必要なことは
 1.偽科学・未科学と正しい科学を見分ける最低限の科学の知識
 2.報道を鵜呑みにしないでその真偽を確認する能力
 3.自分の限られた知識と経験と思いこみで判断し行動する傾向を自覚して検証する能力である。
 質疑の中でも先生は、一つの報道、一人の意見をいろいろな角度から検証する必要性、エビデンスによる立証の重要性をいわれていました。
 とても、話し上手で内容も分かりやすく有意義な講演会でした。ページの都合で部分的にしか紹介できなかったことをお詫びします。

医療安全推進委員会 鈴木 久士

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