Home > <1>部会報告 > 第38回静岡県MRI部会研修会

第38回静岡県MRI部会研修会

厳しかった夏の日差しも、秋風とともに和らいできました。いよいよ勉学の秋です。

三連休の初日である平成25914日土曜日に、第38回静岡県MRI部会研修会が静岡市立静岡病院にて開催されました。今回は、講演者及びメーカ含め57名の方に参加して頂き、大盛況のうちに会を終わることができました。

今回のMRI部会研修会では、「骨軟部」という領域をテーマに教育講演及び会員発表を行いました。また、薬品メーカの講演では、「小児におけるMRI検査時の鎮静に関して」、機器メーカの講演では、「3D撮影技術について~原理からアーチファクトまで~」について御講演頂きました。

 教育講演では、静岡市立静岡病院 放射線科 米山 優実先生より「膝関節MRIについて」御講演頂きました。ポジショニングから臨床的なことまで詳細に話して頂きました。まず撮影時のポジショニングですが、膝関節は軽度屈曲位がよいとされています。 膝関節、伸展位で 前十字靭帯は過伸展となり、 逆に屈曲位では、たわみます。

以上のことから、軽度屈曲位で固定するために、スポンジやタオルなどを膝関節の下にひきます。 また、体動を防ぐために砂嚢をのせたりもしているとのことです。次に撮像シーケンスの基本は、プロトン密度強調画像とT2系(SEまたはGRE)を撮像します。方向としては、矢状断像と冠状断像は必須となります。整形外科医師はGRE法の画像を好むことが多い為、T2*強調画像を追加して撮像するとのことです。従って、ルーチンシーケンスとして、プロトン密度、T2強調、T2*強調画像の矢状断像と脂肪抑制併用プロトン密度強調画像の冠状断をベースとしているとのことです。撮像条件として、プロトン密度強調画像では、TR2200ms以上がSNの向上のため望ましいといわれ、エコートレインは10以下であれば十分と考えているそうです。診断についてですが、基本的には、矢状断像と冠状断にてほぼ膝関節靭帯損傷の診断は可能だということです。また、膝関節の外傷性疾患の中で、最も多い損傷は半月板損傷であり、内側半月板は外側よりも大きく、損傷されやすい構造となっています。半月板損傷の所見としては、プロトン密度、T2強調画像ともに半月板内に縦または横走する高信号がみられます。そして軟骨損傷を伴う場合は、大腿骨内側顆や脛骨内側高原の軟骨に不整と陥凹が認められることがあるそうです。注意としては、T2*強調画像では、骨の異常信号がわかりずらい為、プロトン密度強調画像の脂肪抑制併用にて描出するとのことです。ACL損傷に関しては、2012年に日本整形外科学会からガイドラインが出されていて、"MRIACL損傷に有用か"ということに関してGradeB 中等度の根拠に基づいているということで有用性が示されています。前十字靭帯の損傷がMRIで疑われた場合、このように前十字靭帯に平行な、斜位矢状断像を追加していただくと、 より靭帯損傷の把握がしやすくなり、 撮像はプロトン脂肪抑制像が靭帯損傷や液体貯留を見るためには優れているということです。その他にも様々な症例を提示して下さいました。

 薬品メーカ講演では、バイエル薬品株式会社の松井康次先生より「小児におけるMRI検査時の鎮静に関して」について御講演頂きました。2013526日に日本小児科学会・日本小児麻酔学会・日本小児放射線学会より共同で、MRI検査時の鎮静に関する共同提言なされ、これについての説明をして頂きました。2010年日本小児科学会医療安全委員会が小児科専門医研修施設に対して行った調査にて、回答した施設の35%にあたる施設で鎮静の合併症を経験していることが明らかになり、その中には呼吸停止や心停止といった非常に重篤な合併症も含まれているということであった。特にこの低減の中のはじめに、強調しておきたいという部分があり、以下4点である。①鎮静は事前睡眠と全く異なる。②鎮静の深さは「一連のもの」である。③どの鎮静薬も危険である。④パルスオキシメーターは酸素化のモニタであって、換気のモニタではない。パルスオキシメーターは鎮静を行う上で必須であるが、モニタしているのは動脈血酸素飽和度(SpO2)であってPaCO2pHではない。鎮静薬投与下では、多かれ少なかれP1CO2は上昇し、pHは低下すると考えておくべきである。酸素投与すると低酸素血症に陥るまでの時間は稼ぐことはできるが、呼吸性アシドーシスを防ぐことができない。と記載されている。以上のことから、MRIに対応した生体情報モニタの準備の部分において、パルスオキシメーターは必ず準備しなければならないことになっているのに加え、呼気終末二酸化炭素モニタ(カプノメーター)の準備が望ましいとされている。更には、MRI装置更新時には導入することを強く推奨するとなっている。また、鎮静中には、患者監視の為に医師または看護師を配置しなければならないということになっているということであった。

 機器メーカ講演では、シーメンス・ジャパン株式会社 諸井貴先生に「3D撮影技術について~原理からアーチファクトまで~」について御講演頂きました。はじめに参考として、様々画像を紹介して頂きました。SPACE法においては、T1WI,T2WI,FLAIR法の様々なコントラストを3Dで撮像できることに特徴があるそうです。紹介して頂いた画像では、全身MRIや脊髄MRIで、撮像後、isovoxelで撮像してあることから、MPR処理ができるという特徴があり、非常に有用であるということでした。次に、SPACE法ができるまでについて説明して頂きました。エコートレイン数の増加により、T2 Burringやコントラスト変化が非常に問題となっていたが、近年では、目的とした組織の信号強度、コントラストを適切に得られるようPseudo-steady-stateの部分で信号が収集されるようになっているということであった。また、SPACE法は非常にFlow Void効果が強く、プラークイメージングにも応用されているということあった。今まで難しかったT1強調画像についても撮像できるようになり、頭部の造影MRIで利用されているとのことでした。

 最後に、会員発表についてです。まず、沼津市立病院 一杉会員から、フィリップス社製 Ingenia―3.0Tが導入され、肩関節や膝関節などの撮像シーケンスにおいてシングルショット撮像で行っていたT2*強調画像が、マルチショット撮像が行えるようになり、至適条件を検証およびポジショニング等の工夫を行い、良好な画像を得ることが出来たことの報告をして頂いた。肩関節における撮像の工夫として、バンドや砂嚢を置いて呼吸のアーチファクトを防ぐだけでなく、体重の16分の1の重さで牽引をするということでした。こうすることにより、棘上筋が伸びており、よりモーションアーチファクトの軽減されるということでした。次に静岡県立総合病院 大川会員より脊髄MRIについて発表して頂いた。脊髄MRIの工夫点として、脊髄損傷時に、二次損傷を防ぐために、頸椎コイルを使用するのではなく、spineコイルをFlexコイルの組み合わせを用いることで、十分撮像できるということであった。また胸髄MRI造影時の工夫点として、①加算回数増加、②GRE法の利用、③SPACE法の利用の3つを紹介して頂いた。

最後に、多数参加して頂きありがとうございました。今後とも皆様の興味を引く話題を提供していくように努力いたしますので、次回以降の多数の参加をお待ちしております。

MRI部会 大川剛史)   

Home > <1>部会報告 > 第38回静岡県MRI部会研修会

Feeds

Return to page top