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第4回静岡MRI技術研究会 教育講演 報告

平成28319日(土)

B-nest ペガサート6Fプレゼンテーションルーム


今回の教育講演のテーマは、「膵管癌と膵嚢胞性疾患の画像診断」とさせて頂き、山梨大学医学部附属病院 市川新太郎先生をお招きして、御講演を賜りました。

 はじめに、膵精査目的の基本撮像と致しまして、附属病院でのCT及びMRI検査におけるプロトコルの紹介をして頂きました。

 CTについてのプロトコルとしては、造影剤600mgI/kg,30秒固定注入・単純+造影3or4相とのことでした。造影4相の内訳は、早期動脈相25秒(術前検査のみ撮影)、膵実質相40秒、門脈優位相70秒、遅延相240秒とし、遅延相以外の撮像では、5mmスライス厚の画像以外に、1mmスライス厚画像の送信まで行っているとのことでした。

 MRIプロトコルとしましては、3Tにて32chコイルを使用し、造影剤は、Gd-EOB-DTPAを使用。撮像シーケンスとしましては、脂肪抑制T1WIin-phase,out-phase,MRCP,造影前+dynamic study(動脈相6相、90秒、120)、脂肪抑制T2WIDWIb=0,500,1000+cDWI)、肝細胞相(20分)とのことでした。

 次に、膵管癌についてのお話をして頂きました。まず、疫学的に、他の悪性腫瘍と比較して、年間の新規罹患患者に対して、年間の死亡者数の割合が多く、非常に死亡率の高い癌であり、また、根治的な治療としては、手術のみであり、根治的手術施行でも予後が不良であるとのことでした。 

MRIの画像所見の特徴として、a).主膵管の途絶と上流の拡張、b)境界不明瞭な腫瘤、c)脂肪抑制T1WIでの低信号、d)DWIの高信号、e)dynamic studyの乏血性、遅延性造影があるとのことでした。この中で3D-MRCP及びDWIについては、診断に寄与する部分が多く、非常に重要なため、放射線技師が検査に取り組むに当たり、きれいな画像を提供して欲しいとのことでした。

 その理由として、まず3D-MRCPについては、主膵管の拡張が微小膵癌の発見の契機になることや、腫瘤形成性膵炎との鑑別(duct-penetrating sign)に役立つことがある為とのことでした。また、DWIについては、空間分解能が低いですが、病変検出能が高く、微小膵癌やIPMN由来癌の検出に有効なことがあるとのことでした。但し、DWIにて膵実質と等信号となるものも存在し、膵癌47%DWIで指摘困難とも言われており、また、膵癌による膵管閉塞による随伴性の炎症のため、DWIの高信号の範囲が広く描出されることもあり、注意は必要とのことでした。

 次に膵癌におけるGd-EOB-DTPAを使用する目的としては、膵癌におけて肝転移症例は、手術適応でなくなる為、治療方針決定の重要な因子である為とのことでした。また、膵癌の肝転移は、結節径が小さい、肝被膜下に多い、A-Pshunt様の造影効果を呈する等の特徴を持っているため、CTでは診断困難な場合が存在するため、微小肝転移の検出に有用であるGd-EOB-DTPAを使用するとのことでした。

 膵癌における最後のお話は、CTにおける局所進展度評価についてでした。特に動脈・門脈・静脈浸潤の評価方法についてお話をして頂きました。血管への浸潤評価としては、腫瘍が血管に対して、「接触角が180°超えるか超えていないか」と「血管の変形があるかないか」で浸潤の可能性が高いか低いかを判断しているとのことでした。また、NCCN criteriaというものがあり、切除可能か否かについての基準も定められているとのことでした。切除可能なものとしては、「腹腔動脈、上腸間膜動脈、肝動脈周囲脂肪濃度上昇なし、上腸間静脈・門脈の変形なし」切除不能なものとしては、腹腔動脈、上腸間膜動脈明らかな浸潤、再建不可能な上腸間静脈・門脈浸潤」ボーダーラインとして、挙げられるのが、「胃十二指腸動脈、肝動脈への浸潤、上腸間膜動脈の接触角180°未満、静脈の狭小化、静脈の閉塞あるが、近位、遠位に再建可能な血管がある、上腸間膜静脈、門脈の変形を伴った浸潤」とのことでした。このように基準は定まっているものの、実際に血管浸潤を評価するのは、非常に難しく、診断能が他臓器への浸潤に比べ低いと言われているとのことでした。このため、ここで放射線技師に求めることとしては、体軸に対するaxial coronal saggitalのみではなく、血管に対して、腫瘍の接触角が見やすい角度のMPRCPR画像の再構成をお願いしたいとのことでした。また、膵周囲組織浸潤の画像診断の指標としては、腫瘤状の突出や膵周囲脂肪織の索状の濃度上昇とのことでした。

次に、膵嚢胞性疾患についてです。主なものとしては、IPMN,MCN,SCNとなります。まずIPMNについてですが、IPMNの国際診療ガイドライン2012というものがあるとのことでした。この中で、主膵管型or混合型で主膵管径>10mmのものは手術の適応、分枝型については、膵頭部病変+黄疸、造影効果のある結節、主膵管径>10mmのものは、手術の適応となり、これら所見がないものでも、拡張分枝>3cm、厚い被膜、主膵管径5~9mm、造影効果のない結節、抹消膵実質の委縮を伴う主膵管径の急激な変化という所見があれば、手術の適応になるとのことでした。MCNについては、疫学的に、ほぼ全例女性と言われており、膵体尾部に好発。画像の特徴としては、cyst in cyst appearance(夏みかん状)で厚い線維性被膜を持ち、膵管との交通がないとのことでした。Malignant potentialを持つため、原則完全切除の方針となるとのことでした。SCNについては、基本的に良性であり経過観察となるとのことでした。画像所見としては、microcysticのものは、蜂巣状、多血性(隔壁の染まり)、中心部の石灰化(10~20%)、macrocysticのものは、MCTに類似し、画像では、IPMNとの区別ができないことがあるとのことでした。solidのものは、極めて稀な症例とのことです。Solidなため、多血性充実腫瘍の像を呈するため、早期濃染・T1WI低信号、T2WI高信号の所見を呈するとのことでした。

その他の膵嚢胞性疾患として、膵内副脾のepidermoid cystDWI高信号:ケラチン含有のため)、リンパ上皮嚢胞(ケラチン含有を反映した画像所見:T1WI高信号、T2WI顆粒状低信号含む、DWI高信号)、内分泌腫瘍における壊死、変性による嚢胞状腫瘤(サイズが大きいほど嚢胞変性の頻度が高い。壁が厚く、壁の早期濃染)、Solid-pseudopapillary neoplasm(若年性女性に多く、低悪性度病変(転移7~9%)、腫瘍内出血による嚢胞変性があり、画像は、出血を反映したものとなる(単純CT 軽度高濃度、T1WI 高信号、T2WI 高信号と低信号が混在))、仮性嚢胞(慢性膵炎に関連し、感染・出血を合併すると内部が不均一になる。)真性嚢胞(仮性嚢胞と比較して、圧倒的に頻度が低い。von-Hippel-Lindau病、polycystic disease関連して、多発嚢胞の所見となる)

このように膵臓には様々な嚢胞性疾患がありますが、CTMRIは最も重要な診断のツールであり、MRCPをまず放射線技師として、きれいに撮像することが、最も重要なこととのことでした。

 今回、膵管癌及び膵嚢胞性疾患について、画像の症例を多く提示していただきながら、画像所見について、詳細に御講演して頂きました。現在、放射線技師の読影補助に関して、様々な講演が行われていますが、改めて、まずは、放射線科診断医に、アーチファクトの少ない画像を提供することが最も重要なことであると思いました。また、特にMRI撮像に関しては、疾患によって、特に力を入れて撮像する部分とそうでない部分を理解するために、疾患の特性をよく把握することが重要であり、また、CTにおいても、病変を見つけることも重要ですが、次の一手として、局所進展度評価について、放射線科医がどのようなポイントを見ているかをよく理解し、それに見合った画像を作成することで、放射線技師の存在意義をより見出せると思いました。

MRI部会 大川 剛史

(静岡県立総合病院 放射線技術室)

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第36回静岡県MR部会研修会資料

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