Home

静岡県放射線技師会 アンギオ部会

第44回 静岡県放射線技師会 アンギオ部会研修会

 平成27年10月17日(土曜日)に第44回 静岡県放射線技師会 アンギオ部会研修会を静岡県男女共同参画センター(あざれあ)において開催いたしました。今回は「EVT」に関する研修会を企画いたしました。
 まず、メーカー講演といたしまして共催メーカーであります第一三共株式会社の佐々木達先生より「非イオン性等浸透圧造影剤 ビジパークの有用性について」というテーマで ご講演を賜りました。ヨード造影剤は血管造影や造影CTなどの画像診断において必要不可欠な体内診断薬であり、多くの医療施設において使用されています。非イオン性等浸透圧造影剤 ビジパークは、分子結合を変えることで同じヨード量でも分子数を従来の低浸透圧造影剤に比して減らし、等浸透圧を可能にしました。本剤は造影剤腎症(contrast induced nephropathy:CIN)と呼ばれる急性の腎障害、薬剤注入時における熱感や疼痛およびそれらによる患者の体動、血管内皮障害、臓器障害といった副作用の発現を抑えることに成功しています。過去の臨床試験データや事故事例なども用い、「非イオン性」で尚且つ「等浸透圧」の造影剤がいかに安全性と有効性が高い薬剤であるかをご説明いただきました。
 会員講演といたしまして、聖隷浜松病院の松井会員より「下肢EVT症例提示(CTO)」というテーマで、静岡県立総合病院の川島会員より「二酸化炭素を用いた血管撮影の有用性」というテーマで発表して頂きました。
 「下肢EVT症例提示(CTO)」のテーマでは施設紹介、機器紹介、下肢CTO症例の報告を交えながら聖隷浜松病院における下肢造影の撮影プロトコルやEVTにおける放射線技師の業務について報告して頂きました。東芝のアンギオ装置独自の機能である「Dynamic Traceモード」は体厚差の大きい部分の背景画像を圧縮することで骨陰影を薄くし、デバイスの視認性を高めるものでありますが、特に骨と血管の重なりの影響が大きいCIAにデバイスをクロスする際に大変有効であることが分かりました。
 「二酸化炭素を用いた血管撮影の有用性」のテーマでは、施設紹介、シャントPTA症例の報告を交えながら静岡県立総合病院におけるシャントPTAの撮影プロトコルや放射線技師の業務について報告して頂きました。同院では年間約2400例のシャントPTAを行っており、そのうちヨードアレルギーを持つ患者や重篤な甲状腺疾患を持つ患者に対して炭酸ガスを用いて造影を行っています。炭酸ガスの特徴は血液に溶けやすく、代謝も早く、無アレルギー性、無浸透圧、低粘稠性、低コストといった長所があります。短所として、炭酸ガスは気体であるため造影剤の分布が前面に集中してしまい全ての血管を描出することは困難であること、気体特有の血管閉塞「vapor lock現象」を来す場合があること等が挙げられます。実際の撮影画像を用いて炭酸ガス造影法について発表して頂きました。
 特別講演といたしまして、名古屋大学医学部附属病院 血管外科 病院講師 児玉章朗先生より「重症虚血肢治療の最前線~血管外科の立場から~」というテーマでご講演を賜りました。先生は末梢血管の手術をご専門とされており、本日は、慢性下肢動脈閉塞症:PADおよび重症下肢虚血:CLIの患者を例に取り上げて発表して頂きました。透析導入患者の増加を受け、PADの患者は半数以上が脳や心臓など他の重要臓器の血管障害も併発していることが分かっており、最近では、PADは全身性動脈硬化症:ATISという新たな文脈で語られるようになりました。PADの診断には潰瘍の部位確認と質的診断、血管触診、ABI、SPPといった非侵襲的なデータを積み上げ、造影検査はそれらで陽性となった患者に対して行います。Amputationの位置が近位になるほどQOLや生存率が低くなるため、PAD患者の血行再建術はたいへん重要であります。血行再建術には血管内治療とバイパス術の2つがあります。血管内治療はfeasibility:実行可能性に優れ、バイパス術はdurability:耐久性に優れており、部位や進行度によってどれを選択するかは常に議論が重ねられているところであります。近年では骨盤腔内の血管は血管内治療にシフトしており、下肢、特に下腿はバイパス術にシフトしています。PADやCLI、バージャー病など様々な症例に対する術式や、本邦にて行われているSPINACH Registry(重症下肢虚血に対するバイパス術と血管内治療に関する多施設共同観察研究)をはじめ各国のstudyの現状についてご教授頂きました。
 いずれの演題も「EVT」に関する情報として大変興味深く拝聴致しました。最後に、貴重なご講演を賜りました先生方、参加して下さった会員の皆様に心より感謝申し上げます。

アンギオ部会/山内紘作

  • Comments (Close): 0
  • TrackBack (Close): 0

Index of all entries

Home

Feeds

Return to page top